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OCT

当院では平成22年12月よりOCT(光干渉断層計)の最新機種であるNIDEK社製、RS-3000を導入して診療に役立てています。なんとなく語感の似たCTのような装置と考えていただいたらよいかと思いますが、最近の眼科領域における診断技術の進歩として画期的なものと考えられています。一言で言うと網膜、神経の断面を見ることができる装置、ということになります。

外観は上のようにパソコンとカメラに相当する部分からなるコンパクトな装置です。

この装置で網膜の断面を観察することにより診断できる病気は、網膜、特に黄斑部という網膜の中心の病気、そして視神経の障害される緑内障が代表的なものですが、最近では網膜色素変性症というような病気でも変化が捉えられることがわかってきました。

眼科の検査では角膜、水晶体(白内障になるところ)、硝子体、といったある程度透明なところは断面、すなわち中身の変化を捉えることができましたが、大切な網膜(奥で光を受ける、カメラのフィルムに相当する部分)はあくまでも表面からその色の変化、腫れ具合などを見て出血があるとか、浮腫、あるいは穴が開いているということを診断していました。その補助としては造影検査といって、蛍光色素を注射してその色素の動きを見る検査が行われていましたが、造影剤のショックやアレルギー反応などの可能性がありました。腫れているのか、へこんでいるのか、穴が開いているのか、色が変わっているだけなのか、こういったことは表面から見ただけではわかりにくいこともありますが断面で見れば一発でわかります。

それでは具体的な画像を見ていただきましょう。

正常の黄斑部(網膜の中心)の断面の画像

上が正常の黄斑部(網膜の中心)の断面の画像です。

網膜はいくつもの層からなり、中心部はへこんでいます。これが正常のOCT画像です。

病気が起こるとこの構造に変化が出てきます。

例1 黄斑円孔

上は通常の写真で、赤い十字がクロスしている部分の色が変わっているのは明らかですが、腫れているのか、穴が開いているのか、判定は困難です。ところが下の写真、断面で見れば穴が開いているのがわかります。

例2 黄斑前膜

これはやはり網膜中心の黄斑部というところにセロファンのような薄い膜ができて、光が通ることはできるのですがその膜のしわによって光の通りかたが変化し、ものがゆがんで見えることになります。

上の通常の写真では赤い十字がクロスしている部分のなんとなくぼんやりした感じと周りのしわがわずかにわかる程度ですが、下の断面写真では表面に膜があるのと、膜の牽引によりへこんでいるべき黄斑部が逆に膨らんでいるのがわかります。

黄斑前膜の写真

OCTでの黄斑前膜の写真

例3 加齢黄斑変性症

通常の写真は上ですが、赤い十字がクロスしている部分の色が丸く変わっているのと、周りに黒い部位があります。下の写真、断面で見れば下の部分に新生血管と思われる隆起があり、網膜の層構造が破壊されているのがわかります。

加齢黄斑変性症の写真

OCTでの加齢黄斑変性症の写真

例4 中心性漿液性網脈絡膜症

上の写真ですが、真ん中が黒くなり、すこしぼんやりしていますが、膨らんでいるか、へこんでいるかがわかりません。下の写真で
は水がたまって腫れているのがすぐにわかります。

中心性漿液性網脈絡膜症の写真

OCTでの中心性漿液性網脈絡膜症の写真

例5 緑内障

緑内障は目と脳をつなぐ視神経がやられて目で見た情報が脳に伝わらなくなる病気ですが、網膜の神経線維層という部分が薄くなっていることが最近の研究でわかってきました。OCTを用いた緑内障の診断は以下のようになります。

①視神経の周りの網膜の厚さを360度測定する。
②部位ごとの患者様の年齢に応じた正常値と比較する。
③正常を下回った場所を判定して、視野の異常部位と比較する。

下の図では二段目の波状の青、黄、赤の三色の図が各年齢での正常値と、折れ線グラフでご本人のデーターを示しています。そのデータをもとに異常の部位を示したのが一段目中央で、赤い部分が神経線維層が薄くなっているところです。

従来緑内障の診断においては、画像診断は熟練した緑内障専門医の診断に及ばないとされてきましたが、OCTの登場により精度がはるかに向上したと考えられています。

目の奥にある網膜を断面で観察するという、以前には想像もつかなかった画期的な技術を用い、今後の診断に役立てて参りますので、網膜の病気、緑内障の診断などご希望の方はお気軽にお申し付けください。

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